岡市 尚士
プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで 第59話「その日」
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「PRIDE」が旗揚げされて大きく前進した格闘技界とは対照的に宮古商業レスリング部はようやく落ち着いた日々を取り戻しました。
岩手県新人戦(優勝者は春の全国高校生選抜へ)が終わり。それまでの合宿続きの日々から解放されたためです。
練習の空気感も佐山先生シューティング合宿みたいなピリピリしたムードだったのが明らかに緩くなり我々サボレスラーが過ごしやすいシーズンが訪れました。
これからは気軽に「仮病」が使えます。
地獄の合宿中、朝から晩まで視界の中にいる鬼のコーチ陣相手に本気で具合悪い時以外で病を伝えるとなると相当の演技力が要求されますけど
家の電話から担任宛だったら楽勝です。学校休めると自動的にそのまま部活も休みになります。
新人戦で優勝して春の全国選抜に出場する事になった健太くん以外の我々部員達は来年5月の高校総体予選まで半年以上も試合がありませんから、このサボりのテクニックを駆使してもそこまで目くじらを立てられる事もありません。
とは言っても大体は休んだって結局ギター弾いただけで終わるので何の印象にも残らない一日になるんですけど
その日は皮肉にもサボった事を一生忘れられない一日になりました。
友達が事故に遭ったからです。
列車による人身事故。
それを知ったのは午前中。家にかかってきたトクからの電話でした。
「真君が事故に遭った」と。
真(しん)君は俺から見て近しい存在であるカズ君のバンドのドラムです。
トク、カズ君と同じ津軽石中学校出身で高校はカズ君と同じ宮古工業。ちなみに我がバンドのワッチャン、澤田君も同じ工業。
俺は真君とは中学も高校も違いますが。レスリング部を脱走してから今年復帰するまでの一年間。トクの家。カズ君達のバンド練習。顔を出すところ出すところに彼はおりましたので
トクやカズ君みたく密な関係ではないかもしれませんが仲間内のひとりっていう感覚でした。
そんな真君の事故の知らせをくれたトクの話によると。
接触した烈車は、なんと毎朝俺らが通学で使ってる時間帯のJR山田線だと。
現場は真君の家から近い津軽石の踏切。
事故発生直後から騒然となっているであろう学校方面よりも遅れてその情報を知った俺は
自分が学校休んでる事なんか関係なく慌てて家を飛び出ました。
慌ててって言っても何をどうしたらいいか分からないのでとりあえずトクの家に向かいます。
ただトク達が住む津軽石駅まで。そのJR山田線で約40分。
こういう時特有の襲ってくる悪い予感を無視しながらなので、えらい長旅に感じます。
トクの家には真君にゆかりのある同級生達がそれぞれの学校を早退してゾロゾロ集まってきました。初対面同士も何人か居たかもしれませんが悪い情報が嘘であってほしいという願いみたいなものを共有しようとする空気が部屋を支配していたので、よそよそしさとか、気まずさみたいなのは、あんまり気になりませんでした。
そして、しばらく経ち面会に行ける事になりトクの家から車で20分ほどかかる宮古病院に。
面会を果たして泣き崩れた数人を見て。
自分の祖父二人の時には感じなかった絶望感に襲われました。泣いてるのを見たことがない同級生達が泣く姿を見るのがこんなに辛いとは。祖父達の葬式の時には我慢したのに耐えれませんでした。
帰りの車内は誰一人、無言で。
陽が暮れるころ津軽石に帰ってくると。
暗がりにおそらく100人前後は居たんじゃないかな。高校生達が線路沿いにウジャウジャいました。みんな訃報を聞きつけて訪れたんでしょう。
その群れの中を歩いてるとギターを持ったカズ君、タケちゃん、大坂くん。残されたバンドメンバー3人と遭遇してまた悲しみが襲ってきました。
ウチのバンドのワッチャンと澤田君もいました。
やがて工業のバンド達が今回の事を弔うかのように線路に向かって代わる代わる演奏をし始めました。
その日は自分でもビックリするくらい泣き過ぎて帰る気力がなくなったので、そのままトクの家に泊まり。翌日の葬儀も学校に行かずそのまま出たように記憶してます。
こういう時ってこの事以外に目を向けれる余裕が1ミリも湧いてこないもので。部活を休んで怒られるとか全然どうでも良くなっているため2、3日は家に帰らず。それを親に連絡したのか学校に連絡したのかすら全く覚えてません。
そしてこれは津軽石や工業生だった人間からは怒られるかもしれませんが、この日が11月の何日だったのか覚えてないんです。
ただ覚えてないのは日にちだけで。
でもこの日の事は一生忘れないでしょう。
そしてこの出来事をこのブログに書くべきかかなり迷いました。
しかし東日本大震災の時もそうですが不慮の死に直面して、飲み込んで、それを踏まえた上で生きていかなければならないので
やはり影響というか。まあだからと言って「こう生きていくぞ!」と高らかに宣言するものでもないとは思うんですが
しかし全く人生に関係が無かったわけでは決してありませんので。
あの日、線路に集まった100人前後のみんながそうであるように。俺もまたあの日を踏まえた上であれから22年近く生きてきたわけで。
なので友人達や関係者、誰にも相談せずに書いてしまいましたが、どうかご勘弁ください。
そして時系列的に、この事故の後くらいから地元の高校生達によるバンドシーンみたいなものが発生しました。
それまで水面下に潜んでいたであろう数々のバンド達が急に湧いて出るように次々と登場して。学校の枠を超えて定期的にライブを開催したり。地域イベントに参加したり。
それって、もしかしたら真君が志半ばで卒業まで出来なかったバンド活動は絶対やらなければならない!っていう気持ちがみんなの心の中にあって。それに突き動かされたからあそこまで熱を帯びた地元ではちょっとしたムーブメント?に発展したのかなと。考えるわけです。
まあ実際わからないですけどね、誰とも示し合わせた事なんかないから。でも俺は少なからずそういう気持ち持ってやってました。
まあだからってそれが弔いとして果たして正しかったのかどうかなんて今でも解りません。
この記事を書き終えようとしている今なんかは人生がどんなに辛くなろうが人殺しだけは避けて生き続ける事が我々にできるせめてもの弔いなのかな、とも思ってますけど。それもどうなのか。解らないですね。
あれから22年。どうですか。あの時、線路にいた人達。そろそろ40歳になりますけど。
みんなで酒飲みたいですね。
つづく
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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