岡市 尚士
CDデビューした直後、突然2006年の全日本コンバットレスリング選手権大会に出ようと思った話 「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第119話」
「同い年の有名人である小池栄子/広末涼子/妻夫木聡/岡田准一/優香らと肩を並べるスターになる」
そんな夢を、25歳にもなる友人が語り出したら、とりあえず「何言ってんのコイツ?!」と反応してしまうのが一般的な感覚だと思うんですけど
2005年の我々には、それがあながち頭おかしい奴の虚言とも言いきれない″風″が吹き始めておりまして
2005年のコーチガリー
11月、全国CDデビューを果たした事により
その風はさらに勢いを増し、年末年始に吹き乱れ
すべては翌2006年に託されました。
(それまでの詳細は前記事こちらから)
そんな、一般的には頭おかしい奴と見なされてもおかしくはないスターへの夢とは別に
2006年新年早々、突然沸いてきた
「試合に出てみたい」という気持ち
これは別に売名とか話題作りとか関係なく
単純に「同じくらいの体重の人と戦ったら、どうなるのか?」と思ったからなんですけど
それにはU-FILE火曜昼練習会メンバーの活躍が起因しておりまして
練習会メンバーである小田貴久さん、久米田典人さんの二人が
昨年、ちょうど我々がCD発売したのと同じくらいの時期に
「PRIDEチャレンジ」という総合格闘技のアマチュア大会に出場するというので応援に行ったんですよ。会場である港区のPRIDE道場まで
倉庫を改装したようなPRIDE道場は、若きハイエナ達の闘争心のせいなのか、ライブハウスなんか甘っちょろいぐらい殺気立っていて
そんな空気の中、小田君も久米ちゃんも、そんなのどうってこたぁねえよ、と言わんばかりの堂々たる勝ちっぷりで
うおおおお、すげええええ!!
俺もね。会場でも若干浮くくらいのバンドマン風情ですけど
一応、この強い二人と毎週練習させてもらってますからね。と、ピリピリした会場内に対して「どや感」を隠さずにはいられなかったんですけど(笑)
気づけば、田村潔司先生をはじめとしたU-FILE練習会に混ぜてもらってから
そろそろ一年が経とうとしていました。(通い始めの詳細はこちら)
もちろん練習会の中で最弱であることは相変わらずなんですけど
一年間で劇的に変化したのが
「そう簡単にはやられなくなっている」という点
それどころか。ごく稀に、苦し紛れに仕掛けた技が、ハマる時もあったりして
そしてメンバー全員、体重が80キロ前後。もしくはそれ以上はあるんですけど、俺ひとりだけが60キロくらいなんですよ。
ですので「これ、同じくらい体重の世界でなら、そこそこ闘えるんじゃないかな?」と
そんな時、練習会メンバーのひとり/金森道くんが(数年後、トイカツ道場竹川くんとパンクラスで試合)
「3月のコンバットレスリングに出ようと思ってるんですよ」と言うので
「あ、それ俺も一緒に出る!」と
これが始まりですね。
コンバットレスリングが割と危険なルールだとは知らなかった無知ゆえの大英断
格闘技に縁のない方は、全くピンと来ないと思いますが、一括りに「寝技」(殴る蹴るナシで。間接を極める、もしくは首絞めて、参ったさせるルール)と言いましても
その大会によってルールが細かく設定されているんですね。
その背景には「膠着させないため、怪我させないため、etc、、」いろんな事情があるからなんですけど
その「怪我させないため」の要項で、まず最初に引っかかるであろうヒールホールドという技がありまして
掛け方も″内″か″外″かによって「内側靭帯」か「外側靭帯」を損傷または断裂させることを目的とした恐ろしい技なんですけど
特に俺が現在嗜んでいるブラジリアン柔術の世界ですと、このヒールホールドっていうのは「全面禁止」なんですね。黒帯になろうがダメ!
それを知らずに入会してきた若者が、ベテラン柔術家にヒールホールドやろうもんなら大激怒されてもおかしくはない
「ヒールホールド=悪」みたいな風潮もどっかのコミニティーには絶対存在してるはず
そんぐらいの技なんですよ。ヒールホールドっていうのは
なんですけれど。当時、出ようとしているコンバットレスリングっていうのは、そんなヒールホールドが「全面OK」とされています(汗)
しかもレスリングシューズ着用が義務付けられていますから、余計ヒールホールドが掛かり易い、すなわち足が破壊されやすい(笑)
所属チーム名を決めないと、、、そうだ「コーチガリー」所属として出ようかな
大会に出るにあたり所属チーム名を決めなきゃいけないらしいんですよ。
U-FILEで練習させてもらってはいますけど、一般会員と所属プロ選手以外は名乗れないので、さてどうしようかなと。
「無所属」でも良いんだけど、せっかくの記念なので「コーチガリー」所属ってことにしようかな
と思ってましたら、一緒に出る金森くんが
「どうせ一緒に出るなら同じチーム名にしません?! ・・で、良かったら東三田二丁目筋肉会として出ませんか?!」と、、
は?何それ(笑)
聞くところによると金森くん達の通っていた専修大学/生田キャンパスというのは「東三田二丁目」に所在しており
ウエイトトレーニング室にいつも来るメンツで、部活の垣根を超え
その「東三田二丁目筋肉会」を名乗っていたと
ああ、なるほど。自分らの仲良しグループに名前を付けたくなるアレね。オッケーオッケー!
まあ、そもそも今回は金森君のバーターみたいな感じで出るし。そして何より、同じチーム名で出た方が俺自身の安心感に影響する。
筋肉オバケの金森君が隣に居てくれるその安心感たるや。
普段は強気なのに、申し込むと弱気になるアレの初歩的なパターン
こうして「第12回全日本コンバットレスリング選手権大会」に申し込んだわけなんですけど
急に焦り始めました。
大会が行われるのは3月18日
あと二ヶ月ちょいあるな。なんて余裕かましてましたけど、よくよく考えると、あと10回くらいしか練習出来ないじゃないか!!
その不安材料は「技術のなさ」
いくら練習会でやられなくなっていて、ごく稀に苦し紛れの技が決まる事があるって言っても
それが一体どういう技術体系で発生しているのか。そして、なぜやられたのか、もしくはやれたのか
よく分かっていないんです。要するに分からない事が分からないんです。
だから試合のプランを練ろうにも練れない。こりゃ致命傷になり得るぞと
もちろん、メソッドを求めて今まで毎週練習してはいましたけど。いかんせん練習メンバー達との実力差があり過ぎて、それを練習で立証できるまでに至っていない。
そして練習会はプロ練習みたいな位置付けで、それに混ぜてもらってる身としては技術アレコレを質問するのもいかがなものかと。お金払ってる一般会員さんとは違いますから
だから残すところあと10回くらいの練習以外に
藁をも掴む思いで始めたのが、それまで一切やることの無かった「自主トレーニング」ですね。
自主トレーニング期間中に誕生した自信作 「頑張ったけどダメだったって言ってもいいよ」
まあ自主トレーニングっていっても、何をやればいいのか、よく分かっていないんですけど
とりあえず「技術のなさ」だけは痛感していたので
同居人のカズ君(格闘技素人)を相手に、家でシチュエーションスパーリングのようなものをお願いしたり
カクヤスのバイト中は、エレベーターは使わずに階段だけにしたり。瓶ビールのケース運ぶ時も2ケースじゃなくて3ケースづつにしてみたり
あとはとにかく走りましたね。2、3キロくらい体重調整もありましたし。厚着して
その走ってる時に降ってきたんですよ。
これは、、!!ってフレーズが
我々みたいな曲を作っている人間というのは、常日頃から人々の心を掴める強烈なフレーズを探し求めて、四六時中生活しているタイプの人間が多いと思うんですけど
ちょうど世田谷通りこと「せたどう」沿いを
そういえば今までスロットで生活していたカズ君が「最近、勝てなくなってきた」って言ってたなぁってのを、なぜか思い出しながら走っていたら
「頑張ったー、ダメだったー」
っていうフレーズが、メロディと一緒に出てきたんですね。
走りながら、それを頭の中で繰り返している内に、ちょっとづつ変換されていって
やがて「頑張ったけど、ダメだった」ってフレーズに辿り着いたんですけど
これは我ながら、なかなか敗北感と哀愁があってグッと来るなぁと
そして、そのフレーズを基盤に、あとに続くメロディに言葉をハメ込んでは捨てて、色々と試していると
「って言ってもいいよ」って言葉が
ぴったりハマって
、、これだ!!!
「頑張ったけどダメだったって言ってもいいよ」
普段なら、脳内で鳴ってる内は「良いなぁ」って思っても、実際にいざ言葉にしたり、コード乗せたりすると「あれ?そうでもないなぁ」って場合が多いんですけど
これは間違いなく良い曲だ!と確信しまして
走ってる最中だけど、直近の公衆電話に駆け込んで、自分の携帯に電話して留守電に吹き込みました。
「大会が終わったら、これカタチにしよう」
って思ったこの作品が、次に出すアルバムの一曲目になりました。
そんな自主トレ期間なんざ、あっという間に過ぎ去りまして
ついに迎えました3月
まあライブもこなしながら練習会、自主トレ、やれるだけの事はやってきたよ。
あとは体重だけかな
そんな時
東三田二丁目筋肉会キャプテン/金森くんから連絡が、、
「すいません!急遽プロの試合に出る事が決まって、コンバットレスリング出れなくなりました!」
あああ、そういう事なら仕方ないよね
でもね
全く思い入れのないチーム名を、俺がたった一人だけで名乗ることになったのが
まさか「15年後もネット上に残り続ける」ってところまで頭が回らなかったからさぁ
無理言ってでも「東三田二丁目筋肉会」→「コーチガリー」に変更手続きしてもらわなかった事を
心から後悔している(笑)
、、おや?!
徹先生の名前や、知ってる人の名前もチラホラあるぞ?!
つづく
次回「コンバットレスリング出場がもたらしてくれた ″人生あがり感″の光と影」→読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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