岡市 尚士
柔術沼の狂った住人たちに愛を込めて「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第172話」
もう充分だろ。
前回のサプライズ結婚式が最終回で良くないか。
思ってみれば、そこそこ恵まれた環境で生まれ育ったくせに、人生いまいち腑に落ちない組の顔して
好き勝手に生きて、勝手に自滅して
のちブラジリアン柔術がうまいことフィットしただけめちゃくちゃラッキーな人生だろ。
それどころか、津波から奇跡的に逃げ延びて
家族も増え、悪魔のいない会社に入り
柔術茶帯にまで昇格し、サプライズ結婚式まで開いてもらった
これ以上、何を求める?
と著者としての目線からは思うのだが
当事者はそうではなかった。
サプライズ結婚式を開いてもらった2014年あたりから二年間くらいを振り返ると
完全なる「試合マシーン」だった。
生来どちらかというと狂っていた側のタイプだったであろう172話以上にも及んだ人生の中で、最も狂っていたであろうマシーン時代
それを残り4話くらいの最終エピソードとし
このドキドキするようなイカれた人生ことDIJブログにとどめをハデにくれてやろうかと思っております。
という事で先に進みます。
世界中の各ジャンルと同じく、多種多様の住人が棲息している柔術沼のメカニズムから試合マシーンが発生することは沼の中では決して珍しい事ではないのだが
どういうワケか、その中には「子育て中の社会人」がいつの時代も混ざっていたりする。
決して安くはない出場費を振り込んで、ギャラも賞金も出ない試合に、毎月のように出場する。
こういう層は、沼の住人からは尊敬の眼差しを向けられるが、現実社会からは白い目で見られる。
自分がマシーン化している事にはもちろん気づいてはいたが、もう自分の意思では制御不能だった。
片や、俺なんかよりもだいぶ前から柔術沼の住人だった草柔会岩手代表/阿部宏司は
私達のサプライズ結婚式に出席してくれた数週間後、「山田町ブラジリアン柔術練習会」を立ち上げた。
式で、俺のレスリングの師・上野三郎先生と同席して山田レスリング道場を間借りする話がトントン拍子で進んで早速実行の運びとなったらしい。
震災では助けられた命の恩人が、わが山田町まで
草柔会岩手の練習が終わってから、そこから車で片道2時間30分もかけて、わざわざ柔術を教えに行ってくれている。もちろん道場に一人も現れない日もある。それでも阿部さんは毎週、山田町に通った。
そんな阿部さんも俺も、柔術沼にどっぷりという点では同じなのだが、決定的にちがう点がある。
日本一広い県を毎週、往復5時間もかけて阿部さんが撒きに行ってた種はやがて実り、のちに岩手沿岸でも柔術が出来る土壌が整備される未来が待っているので生産性・社会的貢献度共にその功績は計り知れない。
その一方、試合マシーン化してしまった子育て社会人の試合の勝ち負けが社会に及ぼす影響はほとんどない
のであればまだ良いのだが、ヘタしたらマイナス効果の方があるような気がするのは現実社会からピリピリくる空気感のせいなのかは非常に聞きづらい。
そんな現状に平然としていられる程の強心臓があればどれだけ楽か。試合マシーンは他人の顔色観察だとか根回し工作に必死なのだ。
とは言っても、どれだけ大義名分を作ろうが現実問題毎週SNSやLINEの報告で、恩人が俺の故郷まで往復5時間かけて種を撒きに行ってる様子が伝わってくる。
その活動にこれっぽっちも加担できず、せいぜいLINEで「ありがとう」と返信するしか出来ていない現状にうしろめたさや情けなさを感じないわけがない。
しかし恥を忍んで言う。
頭の中は24時間
「試合で勝ちたい」
それしかなかった。
試合マシーンはどうしようもなく哀しき生き物だ。
とは言うが茶帯一年目は負けが圧倒的に多かった。
そりゃ一年目なので仕方ないのだが、何が悔しいって完膚無きまでボコられた試合というのは殆ど無く
「あん時ああしていれば、こうしていれば」
取れたはずの場面が訪れたのに見過ごして取りきれずそれで負ける事がほとんどだった。
鋼のメンタルが欲しいと思った。
試合中に訪れる一瞬のチャンスを絶妙のタイミングで仕留める鋼のメンタル
これはたとえ、一週間に100本以上のスパーリングを課したとて鍛えられるものではない。
それでも練習仲間、特にパラエストラ東京・昼柔術でお世話になっている他道場のみなさんの成績はとても素晴らしく、同じMEWE所属のポンタ先輩からはそれをよく揶揄されていた。
そんなの自分がよく分かってんだよ!!と心の中ではいつも憤っていて。毎月毎月増え続ける負けメダルは息子のオモチャ箱に放り込んだ。
この悔しさを無駄にしない方法として
試合マシーンは良い方法を思い付いた。
「負けた相手の画像を、携帯の待ち受けにする」
これで日常から炎を燃やし続けられる。
人は忘却の生き物だ。悔しさが数日で消えてしまうのは愚か以外の何物でもないと本気で思っていた。
長男を毎日、児童館に連れて行って子煩悩を演じてはいるが、腹の中は復讐心で燃えていた。
中でも、思い出深い敗戦というと
汗ひとつかかずに「反則負け」を宣告されてしまった阿部ミケールさんとの一戦だろう。
それまでは許されていたダブルガード(両者共に横になった状態)による「膠着」が
「これからは20秒まで!それを過ぎたらマイナスアドバンテージ取るからな!」(ペナルティのこと。ペナルティが4つ貯まると反則負け)
と世界基準でルールが大幅に改正された時期に出場した全日本マスター選手権2015において
新ルールを把握してなかった俺が悪いのだが
表彰台の写真がめちゃくちゃ不貞腐れている(汗)
今見返しても待ち受け画像として優秀だ(笑)
余談だが、このミケールさんが逆に反則負けしてしまった光景を一年後に目の前で見ていたのだが
去り際、俺と目を合わせて「輪廻転生!」と言い放ち笑顔で立ち去って行ったミケールさんに、人としての器の広さを感じた。今度生まれ変わったらああいう人になりたい。
それにしてもこの携帯の待ち受けを負けた相手の画像にするという手法は練習に執念が宿るのは良いのだが
その分、怪我を助長した。
またやってしまった。
肋軟骨。
武藤敬司と膝ぐらいウィークポイントになりつつある肋軟骨を痛めるのは、これで何回目だ。くそったれ
スパーリングが出来ない間の練習方法として
負傷箇所に気を使いながら打ち込みをやったとしてもそれはポーズだけの精神的な気休めにしかならない。
気合い無き打ち込みはクソの役にも立たねえ。
もっと効果的な何かはないだろうか
たとえば筋トレとか。
ここはひとつ
重量挙げ国体7位/インターハイ8位の実績を持つ
「金屏風ブラザーズ/兄」(前記事参照)こと
松尾″タンク″健史先生に!
ご教示を仰ごうじゃないかと
そして、返ってきたのは意外な答えだった
「スクワット」
え、スクワットですか?
プロレス団体入門テストには必須というイメージで我々にはお馴染みのあのスクワットですか?
思い返せば、スクワットなんて小学生の頃
週プロで中牧昭二選手FMW入門テストでのスクワットの記事に触発されてやってはみたけど結局、一週間も続かなかったあの時以来かもしれない(第16話「週刊プロレス」で書いてた)
そしてレスリング時代にスクワットをやらされた記憶なんかないため、さほど重要だとは思ってなかったが
でも、そうか世界中のプロレス団体が必ず取り入れているスクワットが重要じゃないワケがないか。
ポーズだけの打ち込みなんかより全然効果あるだろ。
それにしゃがめるスペースさえあればどこでも出来るから道場行けない日でも毎日できるし。
そして全身の筋肉の内、約70%が下半身にあるなんてそんなこと初めて知った。
片ビキニ姿の金屏風ブラザーズ兄と同一人物とは思えないほど真剣な表情で筋肉理論を語る松尾先生を信じ
その日を境に、毎日やる事にしたのだが
このスクワットが
明らかに俺の柔術を変えた。
つづく
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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