岡市 尚士

岡市 尚士

2020.11.27

東京でフリーターみたいな生活しながら、ただ柔術だけをやれていたあの頃が幸せだったなんて…なぜ、過ぎ去ってからじゃないと気づけなかったのか 「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第139話」

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東京でやり残したことはもう何もねえ。

故郷/クソど田舎・岩手県山田町の「田の浜地区」で子供の頃からマグマのように育んできた野心を抱えて深夜バスで上京してから早10年

バンドではスターにはなれなかったけどCDショップに自分らのアルバムが並んで、全国ツアー何度も回ってデッカい会場でも何度もやらせてもらって

田の浜に居たままじゃ、絶対に見れない夢は見させてもらいました。

おまけに都落ちかと思われた人生をブラジリアン柔術によって救われた。

十代の頃、地獄を味合わされた格闘技が「楽しい」と知れただけで、このブログ140話近くに及んだ人生を根こそぎ清算してくれるほどの実績でしょ。

もう充分です。田の浜に帰ろう。

…と、思ってた矢先

俺の目の前に立ちはだかった「社会的制裁」

住民税10年滞納による、給料差し押さえ

毎月四万円づつ。コールセンターの給料から天引き。これから8ヶ月間。まあまあ長いぞ

このように突然、社会の奈落生活に突き落とされ

しばらくのあいだは東京に居残らなくてはならなくなってしまったわけなんですけど

今、思い返してみれば

この社会的制裁を受けるため、東京に少しだけ居残り

フリーターみたいな生活をしながら、ただ柔術だけをやれていたこの頃が一番幸せだったかもしれません。

《全6項目》

◼︎2009〜2010年頃の中野トイカツ道場《1/6》

2009年8月に柔術青帯を取得したことによって

格闘技的な環境に若干の変化が

それまで、レスリングのインストラクターとしてだけ携わっていたトイカツ道場だったんですけど

柔術青帯を取得したという事でレスリングクラスの他金曜夜の「寝技クラス」を戸井田先生から引き継ぐ事になりました。

ちなみに、この柔術の青帯というのが、どのくらいのレベルなのかは前記事「″石田浩″と刺繍の入った青帯、そして引きこもりの格闘技マニアになっていた幼なじみ」に簡単に書いてますので御参照ください。

そして「柔術」と「寝技」の違いをザックリ言うと

道着着てるのが柔術/着ていないのが寝技

ルールや闘い方の細かい違いはあれどザックリ言うとそんな感じです。

ていうか、人様に寝技なんか教える前に社会的義務を覚えろよ!って感じなんですけど

でも、こんな社会的にスーパークズなんですよ俺は!とカミングアウトしたとて、トイカツ道場のみんなはそれまでと変わらず優しかった。

指導者としては黒歴史しかないのを隠蔽して何食わぬ顔で「今日から私がレスリングコーチです」と名乗り出してから、もうそろそろ一年。

この頃は月イチくらいの頻度で道場内飲み会みたいなものもやっていて、戸井田先生を筆頭にマット上で、みんなで輪になって手弁当持ち寄ってみたいな感じで

誰だったかの誕生日の時は、保阪君が「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザー様のコスプレをして(させられて?)ケーキを持って現れた事もあったな

そんな中、クズコーチの俺はというと、道場内飲み会では毎回大量に余る食糧品を根こそぎ貰って帰って、翌日以降の足しにするという乞食っぷりを発揮したりしていましたけど

そんな社会的弱者の俺でも、当時のトイカツ道場には良い思い出しかありません。

道場もまだ狭くて、系列も三店舗しかありませんでしたけど、ホントに全てが良い思い出。

某◯◯君に三角絞めをかけている時に、ジャンピングパイルドライバー気味に頭から落とされ(反則)首を痛めてしまって、コラ!ダメだぞ!ブッ殺すぞ!って思っちゃったこと以外は全部良い思い出です。

◼︎社会的制裁の裏にTJランチあり《2/6》

トイカツ道場ではお金がかからない一方、会員としてお金を払って柔術を習っているホージャマシャードに

社会的制裁を受けている身でありながら、通い続ける事ができたというのは、周りの皆様からの″お恵み″のおかげ以外の何物でもありません。

それまでコールセンターの昼飯は大衆居酒屋の500円ランチとかよく行ってたんですけど

差し押さえ以降は、白米を毎日炊いてタッパーに詰めオカズは前夜にスーパーで半額になった惣菜。みたいなスタイルに切り換えました。

そんな俺の食生活を案じてくださった師匠/TJ先生が月イチペースの割合でお食事こと通称「TJランチ」に

絶望的困窮者の俺と、なぜか黒田先輩の二人をいつも誘ってくださいましたので、我々はTJランチの恩恵を最も受けたチルドレンであると言っても過言ではありません。

そして道場的には後輩である星野さんがよく御自宅の鍋パーティーとかに呼んでくださって、奥様と二人で手料理とお酒を振舞ってくれて、道場内の立ち位置と社会的立場がこんなにも釣り合わない世界もないよななんて、みすぼらしい思いを噛み締めつつ

そして日常的に助けられたのは、俺をトイカツ道場に紹介してくれた、コールセンターの後輩/清澤

元・料理人である彼は昼飯用のオカズを頻繁に作ってきてくれました。そのため職場では″疑惑″が囁かれてましたけどね(笑)

そして、俺の″毎日″を支えて下さったのが、ホージャマシャードの先輩/向後さんからの食糧配給でした。

パスタとか、カップ麺とか

独身男性がもらったら嬉しい食糧品を大量に、2週間にいっぺんくらいのペースで下さるんですね。

道場で無礼な輩が現れると、たとえ柔術スパーリング中だろうが容赦なく右ストレートを浴びせるという、そんなキラーな一面も持つ向後さんですが

本当に慈悲深い先輩なんです。

◼︎そんな向後さんがトイカツ道場に現れた《3/6》

ある日、いつものようにトイカツ道場で指導しておりましたら突然、扉が開いて…

え!!居るはずのない向後さんがそこに…!

「なんでここに居るんですか(笑)!!」って

聞くところによると

え!入会?!

今でこそ、トイカツ道場にも、代々木フォレスト柔術クラブ(元のチームホージャマシャード)にも、そのどちらとも関わりのある人って結構多いんですけど

当時はトイカツ道場とホージャマシャードって全く別の″藩″でしたから、そんな時代に小田急線と総武線を乗り継いで、単身トイカツ道場に乗り込んできた向後先輩って両藩における坂本龍馬みたいな存在だよなと俺は思ってるんですけど

そんな向後さんは後輩である俺の指導を見るために、トイカツ道場に来たわけでは、もちろんありません。

もっと上、めちゃくちゃ高いところを見てました。

◼︎MMA(総合格闘技)に挑戦する先輩達《4/6》

向後正彦37歳、二児の父。MMA(総合格闘技)挑戦

向後さんや俺が会員として通っているチームホージャマシャードというのは、純粋なブラジリアン柔術道場であって「MMAクラス」というのは無いんですね。

しかしMMAを主としているトイカツ道場に入会して、アマチュア修斗に出場し、果てはプロ練習にまで出るようになった向後さんの姿を見て後輩の俺が何も思わないわけはありませんでした。

そして奇しくも同じ頃、俺が巻いている青帯の元々の持ち主だった石田さんもMMAに挑戦しており

そんなMMAに挑戦してる向後さんと石田さんの御二方に、前述の黒田先輩(元プロキックボクサー/現在も黒田キックスクールを主催)が打撃指導をしていたり

先輩達のそんな姿を見せられたら後輩である俺の血が ″たぎらない″わけはなく

試合に出れるほどの経済的余裕なんか、これっぽちも無いんですけど、俺も試合に出たい!ってなりまして

まあMMAじゃなく、柔術ですけど

青帯初試合に申し込みました。

◼︎俺が青帯時代に出た、たった二大会《5/6》

少なからずギャラが貰えるプロ試合と違いアマチュアの大会というのはMMAだろうが柔術だろうが出るからにはもちろん「出場費」がかかるわけで(一般的には大体5000円〜8000円前後だがコロナ禍後は高騰)

生活困窮者であった当時の俺なんか出れるような状況ではないんですけど、周りの御支援はもちろんのこと

柔術大会のスタッフのバイトや、ずっと音響スタッフとして月イチで関わっている頑固プロレスでもらったギャラをそのまま出場費として捻出して

この社会的制裁地獄の中でも何とか出れたんですよね

青帯時代は、たった二大会ではありましたけど

その、ひとつが「全日本柔術新人選手権大会」という2007〜13年の7回しか開催されなかった懐かしき大会

それの2010年2月/品川区総合体育館にて開催された第四回大会に申し込みまして

ちなみに柔術は白/青/紫/茶/黒の「帯」以外に、その帯の中でも「年齢」によってのカテゴリー分けもされており

※現在のカテゴリー名称で

  • アダルト/若い奴から老人まで誰でも出れる
  • マスター1/今年30歳になる人以上は出れる
  • マスター2/今年36歳になる人以上は出れる
  • マスター3/今年41歳になる人以上は出れる

以下、同じように続く…

と区分けされている中で、当時まだ29歳でありながら今年30歳になるという妙策を活かし「マスター1」にエントリー

「おいおい、アダルトに出ろよ」なんて道場の先輩達からツッコまれながら(若者中心の厳しい戦いが予想されるアダルトカテゴリーに挑むことが強さの美徳とされる考え方がある)

そこは頑なに「いや、マスター1で」と譲らず

でも、よくよく考えると、同じくらいの年齢の人達と試合するわけだから、逆に負けられないよな、なんて余計にプレッシャーを感じつつ

そして階級も自分の適正体重であるプルーマ級(現在のライトフェザー級、道着を着た状態で64キロ以下)に出るには2キロくらい体重を落とさなければならないんですけど

そこは黒田先輩から提唱された「低所得ダイエット」を実践(普通にメシ食う金がないので、そのままでも痩せられる、その手があったか!的な画期的な手法)

そんな背景がありつつ挑んだ青帯初試合で

なんとか二試合を勝ち抜いて優勝

そして、その勢いのまま

一ヶ月後の2010年3月に、光ヶ丘ドームにて行われた「GIアマ・オーブントーナメント」という大会にも、同じく青帯/マスター1 /プルーマ級でエントリー

ワンマッチ決勝(トーナメントに2人しか居ないから一回勝てば優勝)でしたけど

エディ・ブラボーのセミナーに行って覚えたばかりの「ラバーガード」を駆使して一本勝ちで優勝

俺の青帯時代の戦績は以上です。

でも当時は、もうこれで充分でした。

あと数ヶ月後、この社会的制裁地獄から解放されたら

田の浜に戻って

実家の戸棚には、東京で獲得したこの金メダル二個を堂々と飾って、それを一生の誇りにして

漁師やりながら細々と柔術をやっていこうと

◼︎東京でフリーターみたいな生活をしながら、ただ柔術だけをやれていたあの頃が幸せだったなんて…なぜ、過ぎ去ってからじゃないと気づけなかったのか《6/6》

しかしまさか、この一年後

金メダルを飾ってた実家の戸棚丸ごと津波に流されて

金メダル二個ともそのまま消失することになるというのも、然ることながら…

なぜ、過ぎ去ってからじゃないと気づけなかったのか

東京でフリーターみたいな生活をしながら、ただ柔術だけをやれていたこの頃が幸せだったなんて…

なんで、あの時、気づけなかったんだろう

死ぬほど金はなかったけど、死ぬほど時間はあった

バンドも、嫁候補も、責任もないけど

その代わり自由だった

なぜ「30歳になったらしっかりしなくちゃ」なんて

別に誰からも頼まれてないのに思ってしまったのか

誰よりも自由人のくせに

何歳になろうとも別にしっかりする必要性のある人間なんか、この地球上にほとんど存在しないでしょ

それなのに、なぜ人は、しっかりしようと自分の首を絞めるのか

そして、なぜ人は、過ぎ去ってからじゃないと気づけないのか

練習の帰り道、向後さんと「あいかわらず我々は紫帯以上の先輩達にはフルボッコにされますねぇ」なんて話しながら代々木上原駅まで歩いてた

あの日々こそが最高だったなんて

なんで、あの時は気づけなかったんだろう

こんな何でもないようなことが幸せだったと思うのは

岩手県に帰郷してからである

つづく

次回「さらば東京〜帰郷すれば人生を清算できるんじゃないか?という幻想〜」←読めます。

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この記事を書いた人

岡市 尚士

岡市 尚士

ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。

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