岡市 尚士
プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで 第51話「Hi-STANDARD」
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母トモコは頭を抱えていました。
そろそろ高校二年になる長男の卒業後の進路について。
小さい頃からお世話になってる上野先生のおかげで宮古商業に入ることが出来たのにすぐレスリング部から逃げ出して。
最近は毎日部屋にこもってギターばかり弾いている。
卒業したら「バンドをやる」と言っているが。職の方はどうするつもりなのか。
お母さん心配しないでください。
先日39歳になった僕です。
息子は先日、法事で集まった親戚のみんなから卒業後の進路として「役場勤め」を勧められた際に
「もし人生が二回あればみんなの言う通りにすっけど一回しかないんだから自分の自由にさせてください」
という妙に説得力のあるワードでみんなを黙らせてたけど
それパクリだから。
パンクラス創設者・船木誠勝選手が15歳で新日本プロレスに入門する前に母親に言った名言としてプロレスファンにはお馴染みの。
そしてもしも仮に人生が二回あったとしても息子は言う通りになんかしない。
絶対やらかす。
そして今、ヤツの頭の中はどういうバンドマン像になるかで一杯。
どんな職だろうとどれもテキトーにバイトするみたいな感覚で考えてるお花畑野郎だから。
とっと上京させて生活苦に陥らせて金銭の援助要求は完全に無視。
それが彼のためです。
だからお母さん、心配してもマジで時間のムダです。
ていうか、そのバンドマン像ってなんなのさ。
と、バンドマンに憧れた事のない人々は思うでしょう。
でもあるんですよ!
ね?!バンドマンに憧れたことのある人達。
バンドマンは音だけじゃなくルックスも大切なんです。
素の自分からの脱却。憧れの対象に自分を寄せるわけですよ。
イエモンとかレッドツェッペリンとか。めっちゃカッコいいですよね。
彼らのルックスってロック的には王道だと思うんですけど。
俺はこういう格好が絶望的に似合わない。
この97年当時オシャレな高校生って古着アメカジ系から一歩脱却してポールスミスとかシャツとか着出してたんですが。
それらを借りて着てみたり。宮古の古着屋MissTeeで買ったサイケっぽい柄シャツを買ったり。
こう見えて中学生から「Boon」とか「MEN’S NON-NO」とか「smart」とかオシャレ雑誌を定期購読してたので
感覚的に分かるんです。
自分には絶望的に似合わないことが。
かといってBLANKEY JET CITYみたく革パンとかクロムハーツのアクセとかも。
予算足らねえなあって話で。。
しかも、こんな磯の香りが充満する漁村。
漁師しか歩いてねえ、ここ「田の浜」において。
ポールスミスとかクロムハーツ身に着けて一体、何の意味があるのか・・
そんなちっぽけな葛藤をしてる高校生に39歳になった今の俺が出会ったら確実に言うでしょ。
お前、服いらねえじゃん。
全裸でチンポ出してろ!得意だろ?!
と。
確かに!
確かに得意です。
ただし男友達の前でなら、、、
でもまだ童貞なもんで勘弁してください。
素の自分でバンドをやりたい気持ちはあるんです。
あるんだけど!
カッコつけてしまう自分がいる。
異性の目も気にしてしまう、、、
セックスしてみたいから。
だから、まだ自分を捨てきれないんです!
そんな時です!
Hi-STANDARDを聴いたのは。
Hi-STANDARDことハイスタは愛読誌「BANDやろうぜ」でかなり推されていたので存在は知っていました。
次のアルバム「ANGRY FIST」リリース前のプロモーション中で。
このレコーディング中に3人揃って坊主にした様子も報じられてて。
田の浜を歩いてても何の違和感もないそのルックスに
とてつもない親近感を感じていたところ
ブランキーの話で意気投合していた同じ山田中学校出身の佐藤和ことワッチャンが貸してくれた2ndアルバム「GROWING UP」
一曲目「MAXIMUM OVERDRIVE」のイントロを聴いた瞬間から
20歳でこの村を出ていくまで。
完全に青春時代を支配されました。
全世界のキッズ達の心が鷲掴みされたそのサウンドを俺が今更ああだこうだ説明するまでもないんですが。
「IN THE BRIGHTLY MOONLIGHT」や表題曲「GROWING UP」を聴いた時に
浮かんだきた情景は
田の浜の風景そのもの。
ハイスタの世界観はまさに俺らそのもの。
俺は吉井和哉やEMMAとかジミーペイジとかベンジーにはなれねえけど
横山健にだったら。
なれる。
まあ、せいぜい頑張れ。
世の中、何が起こるか本当にわからない。
つづく
次回「田の浜の横山健、レスリングに復帰」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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