岡市 尚士
プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで 第26話「喪失感」
「とんねるずのみなさんのおかげです」が、それまでと同じ木曜日21時の枠で「ラスタとんねるず」という全く違う番組に変わり
ボキャブラ天国に若手芸人によるネタコーナーが加わって「タモリのSuperボキャブラ天国」と改名された
そんな1994年4月、中二の春。
とりあえず、憂鬱の極みでした。
ボキャブラ天国/エンディング曲の「今夜はブギー・バック」がさらに憂鬱にさせました。
別にネガティブな要素が全くない曲なのに小沢健二の肩の力が抜けた歌い方が情緒不安定な俺の心にピッタリはまりました。
「憂鬱の原因」
それはクラス替え
人間関係、友情すらも有無を言わさず根こそぎブッタ切ってしまう圧倒的破壊力のシステム。
新学期、新しい「2年4組」のクラス表を見た瞬間
俺は「無」になりました。
仲良かったメンバー達、見事にバラバラ…
特にいつも一緒にいたヒデとマッサ
ヒデはわかき保育園時代からの幼馴染。小学時代から続くプロレス仲間で最高の理解者でした。
マッサは別の小学校だったもののフィーリングが合いヒデと共にプロレス蟻地獄に引き摺り込みました。
クラス替えが実施される前は、この1年5組のみんながもしみんなバラバラになっても、どうせ教室は横並びの同じ階だし、全然平気だろ!なんて
みんなでUWFの最後みたくバンザイしたもんですよ。
しかし現実はそうでもありませんでした。
スーパーストロングマシンとジョージ高野&高野俊二の兄弟は同じリングだったからこそ烈風隊やカルガリーカリケーンズを組んだんですよ。
川田利明とサムソン冬木は全日本プロレスで天龍同盟という軍閥があってこそのフットルースだったように
我々1年5組の仲良しグループも同じコミニティーだったからこそ成立し得たのだと思います。
そんな全然テンションの上がらない心情とは裏腹に…
皮肉にも、マット界は神回の連続でした。
タッグマッチの途中、天龍の「ムタで出てこい!」とのマイクにより武藤敬司がバックステージに一旦退場
グレートムタのペイントを施して出直してくるという前代未聞な事件
団体の垣根を超えたジュニアの祭典「第一回スーパーJカップ」では我がみちのくプロレス/サスケ社長が
同郷の先輩エルサムライとの準々決勝に勝利!準決勝で獣神サンダーライガーから大金星!
決勝ではワイルドペガサス(クリスベノワ)に敗れるものの準優勝というスーパー過ぎるゴッドアングル!
もし、これを1年5組の空気感の中で味わえてたら…
2年生になり遠目から見るヒデとマッサ
そして元1年5組のみんなが新しい布陣にウキウキしてるように見える。
みんな、昨夜ワールドプロレス観たかな…
今は、もう理解者が一人もいない。
学校が楽しくない。死にたくねえけど死にてえ
かといって別に、新しい所属先2年4組が悪いわけではないんです。
1年5組が天国過ぎたんだな。
なんていうか、ホームシックみたいな状態なんす
テレビでは、安達祐実が「同情するなら金をくれ!」と叫んでいました。
俺もある種″家なき子″みたいな状態だけど、金は別に要らないかな。
1年5組みたいな居場所が欲しい。
その頃、ロック界ではあまりにも悲過ぎるニュースに一同、喪失感に襲われていたらしく
俺はそんな事知らなかったけど
数年後「また四月が来たよ」と歌う椎名林檎と同様
この季節になると思い出す。
そんな1994年4月、中二の春。
俺は、とりあえず生きれていて良かった。
つづく
次回「ビートルズ」
※同じ1年5組で当時俺とフランケンシュタイナーやウラカンラナを掛け合えるくらい小兵で俊敏だった田の浜のヒデは今は190センチを越す大男に変貌を遂げ実家の佐々秀建設を継いでおります。山田町に家を建てたい方は是非ご用命下さい(笑)詳しくは→コチラ
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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