岡市 尚士
パラエストラ東京・昼柔術の絶望感と茫然自失「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第168話」
パラエストラ東京・昼柔術
その名前は柔術を始めた頃から知っていた。
別に自分で調べたわけではないのだが、道場にいると「あそこの道場の誰々さんがあーだこーだ」といったゴシップに近い先輩達の会話に新人は聞き耳を立て、業界のノリを学んでいく風潮がどこの道場にもあると思うのだが
この昼柔術こと「昼柔(ひるじゅう)」という言葉も業界ならではの特異なワードとしてキャリア初期に早々と認識はしていた。
なにやら平日の昼間から猛者達が集まって
延々スパーリングをやっているらしいと
イメージ的には、血に飢えた野郎達が地下室に集まる映画「ファイトクラブ」のような集いを想像した。
誰でも無料で参加できるとの事なのだが
そんな所、絶対行きたくねえ
…と思った常人だったあの頃の気持ちなんかとっくに忘れ、頭のネジもすっかり外れている俺が
介護事業所「Piece(ピース)」で働き始めたことにより、そんな昼柔に誘き出されるのは必然であった。
それまで一週間の練習日程というのは水曜土曜は指導のある高田馬場道場、火曜木曜は代々木フォレストかMEWEの昼クラスと決めていたが
月曜金曜に関しては仕事に合わせて、どっかでやるかそれとも休むか特に決めていなかった。
しかし前々回「悪魔のいない企業というのはこの世に存在したのだ…」での説明通りPieceの業務というのは平日は「朝」と「夕方以降」に現場が集中するため
平日昼はかなり暇なのだ。
…「昼柔に行け」…
そんな神のお告げが聴こえた。(昼柔は月水金開催)
たしか最初は、すでに昼柔に通いはじめていた代々木フォレストの先輩にアテンドしてもらった。
都営大江戸線/新江古田駅から地上に出てすぐのビルに真っ赤に輝く「フラメンコ教室」の看板
その隣にパラエストラ東京は所在した。
薄暗い地下一階のドアを開けると
…本物の中井祐樹先生が!!
まあ昼柔術は中井先生主宰なので当たり前なのだが、リビングレジェンドを目の当たりにして面食らった。
ここで、格闘技を知らない方のために中井祐樹先生を超簡単に説明すると、初代タイガーマスクこと佐山聡大師父が設立したシューティング(現・修斗)のウェルター級王者だったが桜庭フィーバーよりも五年遡る「ヴァーリトゥードジャパン′95」で負った右目の失明により引退を余儀なくされ、ブラジリアン柔術に転身1997年には日本初のブラジリアン柔術常設道場「パレストラ東京(のちパラエストラ東京)」を設立。なお失明については長年、公にはせず後進の育成と競技の発展に注力。今日までの総合格闘技史を語る上で非常に重要な人物だというのは今さら言うまでもない程の存在である。もっと詳しくはWikipediaでどうぞ
そんな中井先生をはじめとし
パラエストラ東京には、こんな平日の昼間から柔術の人達がたくさん集まっていた。
ほとんど知らない人ばかりだった。
もちろん中井先生には駆け寄って挨拶したが、その他壁に背もたれて時を待つ皆さんが充満させる雰囲気が新参者の俺には過敏に昂りのように刺さった。
この初めて行った日、誰が居たのか全く覚えてないがもしかしたら常連組の林さん、遠山さん、岡村さん、増田さん、中島さん、石井基善さん、アーロンさん
存在を知っていた範囲だと、かつて試合したグラバカの大川さん、MEWEで同門になったポンタ先輩、REDIPS代表の小野瀬龍也先生、ドラゴンズデン代表の澤田真琴先生
当時すでにかなり知られた存在だった湯浅麗歌子選手
そして世界柔術選手権で3位入賞を果たしたばかりの佐々幸範先生
以上の方々は居たのではないだろうか。その他、我々のような出稽古組も多数だったとは思う。
まあ昼柔自体「私、〇〇道場の誰それです。」と挨拶する決まりも特にないし、それは各々の裁量に任されているのだが、しかし中井先生は誰かが入ってくると「〇〇さん入りまーす!」帰る時も「〇〇さん上がりまーす!いってらっしゃい!」とわざわさアナウンスしてくれるのでそれでのちのちメンバーの名前を徐々に覚えていくことになるのだが
初日に関してはこのように、居たメンバーについては非常にボンヤリしている。
しかし、それとは対照的に
ひとつだけハッキリ覚えている事がある。
俺の技術が全く通用しなかったことだ。
当時はベリンボロをはじめとするクルクル回る系の、いわゆるモダン柔術と呼ばれる技術を多用しており
高田馬場や代々木フォレストでのスパーリングだけではなく試合でもそれなりに使えるようになっていたし
数年かけて磨き上げたソレには多少の自信を持ってはいたのだが、この昼柔初日で木っ端微塵にされた。
特に長渕剛やジャッキーチェンの先輩ファンだと後々に知る事になる遠山さんと初めてお手合わせした時は「俺はライオンズマンションと闘ってんのか?!」という絶望感に襲われた。
しかしそれは、体重差のある遠山さんだけではなく、昼柔メンバーのほとんどに通用しなかった。
しかも誰一人としてモダン柔術なんかやっていない。
ベーシックな柔術、教科書通りのパスガード、普通の抑え込みに己のモダン柔術の脆さを思い知らされた。
もちろん、まだまだ技術的に稚拙だったのもあるが、少し天狗になっていない事もなかった鼻は見事に折られて、その状態で俺は帰りの大江戸線に乗った。
茫然自失。ちょっと考え直さなければならない。
新江古田から新宿までの15分は自省の旅と化した。
今回の件については、いつも練習ノートに書いているような、あの技のあの時の角度やディテールをもっとこうしていれば云々といった細かい話なんかではなく
もっと根本的な所。というか、ほとんど全部。
自分の柔術そのものを根こそぎ全部、考え直す必要があるような気がしている。
なぜなら、やっぱりそうだった。
昼柔メンバーのほとんどが、纏っていた。
あれは紛れもなくMEWEの茶黒帯の人達や(前記事)
代々木フォレストの新井さん塙さん小林さんが纏っているそれと同じ
「目に見えない不思議なパワー」だった。
それを踏まえた上で、こう仮定する。
業界全体のトレンドが、明らかにモダン柔術に傾いているこの2013〜14年の昨今において
これからみんなモダンの小さなπを奪い合おうとしている中で、それとは真逆のベクトルを独占しに走った方にこそチャンスが埋もれているのではないかと
そんな思考が、不思議なパワーに鼻をヘシ折られた事により湧いてきている。
柔術新聞さんでベリンボロの使い手みたいに紹介してもらった俺としては惜し過ぎる選択ではあるが
この決断には可能性が秘められているような気がしてならないと感じてる今日こそがその記念日なんだろう
よし、モダン柔術やめる。
明日から、もうベリンボロは追わない。
そう心に誓い
「ハッテン場に行ってきます」との謎の言葉を残して西新宿五丁目駅で降りた◯◯先輩の背中を見送った。
つづく
次回「父親として強くありたい。私の柔術の先に妻と子の幸せはあるのか?〜何かに気付いてしまった男は茶帯になった〜」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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