岡市 尚士
渡る世間は悪魔ばっかりだな!! 「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/165話」
俺は幼い頃からこの世には悪魔がいると信じていた。
まあ実物を見た事は一度もないのだが、想像上の姿としてはスターウォーズのダースモールに近い。
真っ赤な顔をして、頭からはツノが何本も生えていて長い棒みたいなのを持っている。
そういう悪魔が周りの人間に取り憑いて
俺を攻撃してくる。
ウチの母親が時々、攻撃的になるのは母親のカラダに取り憑いた悪魔の仕業なんだろうと幼心に考えるようになった。
だから小学生の頃、格闘技をやらせる/やらせないで揉めていた頃(こちら)というのは、俺は母親ではなく悪魔と闘っていたんだろう。
そんな悪魔は小中高と年月を経るたびに
取り憑く″媒体″を変えた。
特に高校時代はレスリング部全体に取り憑いた悪魔に殺されそうになっていた。(ここら近辺)
そんな悪魔もレスリング部引退と共に、俺の前から姿を消したが
平穏な日々はそう長くは続かなかった。
悪魔は他人だけじゃなく自分にも取り憑く
バンドをやるため上京後、酒屋のバイト中に炎天下で発狂しながらビールケースを蹴っ飛ばしていたあの日の俺には確実に悪魔が取り憑いていたし
そして何よりバンド活動の終着地点「わっかめん」というのは俺に取り憑いた悪魔が見せたパフォーマンスだったのだろう。
そんな生活に疲れ果て
平穏の日々を求めて故郷/岩手県山田町船越田の浜に帰ってみると
漁師見習いとして乗った漁船には
過去最強レベルの悪魔が同乗していた(笑)
まあ海の仕事というのは事故や最悪死の危険性もあるため悪魔は漁船には乗っておいた方が絶対良いのだが
その悪魔は海の仕事だけではなく、なんと酒の席にも現れた(笑)というか田の浜には悪魔に取り憑かれた大人が多すぎる(笑)
そして、あろうことか悪魔は東日本大震災における、生きるか死ぬかの修羅場にまで現れやがった。
もう我々人類の手に負えない。
その後、悪魔は俺のあとを東京まで追って来た。
常に誰かに取り憑いている。
そして前記事「復興支援活動に殺されそうになっていた時の話」の、その裏側で
″ラスボスレベル″にまで増幅した悪魔であったが
2013年3月に地元山田町で開催したイベントを最後に姿を消した。
すべてが終わった…のかどうか、まだ自信が持てないがイベント後の数日は気持ち悪いほど穏やかだった。
まあバイト先の弁当屋にも悪魔はいるのだが、田の浜時代からのソレと比べるとかなり小物で。要領の悪い奴はやられたりしていたが、俺は簡単にいなせた。
そして「岡市さんは格闘技の先生らしい」という″風評効果″もあり、弁当屋での居心地は悪くはなかった。
このまま平穏な日々が続けばと思っていた。
そんなある日、スマホに着信が…
嫌な予感がする。
発信の主は、カチヨウチ先輩
おそるおそる掛け直してみると「タカシさぁ、弁当屋いつまでやるの?子供も居るんだし、それにイベントも終わった事だし、そろそろ手に職をつけてみたら?
ちょうど哲也さんの・・」
と言い出したところで大体分かった。
多分、介護や
嫌な汗が出た。
カチさんのいう「哲也さん」とは同じ高田馬場道場で柔術インストラクターを務める近藤哲也さんの事だ。
俺は別曜日担当なので、哲也さんとはそんなに絡みはなかったがカチさんと哲也さんは仲が良かった。
そんな哲也さんが介護関係の仕事をしているというのは知っていた。よくFacebookに「仕事なのに映画、カラオケ行って楽しんできました〜!」みたいな投稿をしているのもよく目にしていたし。
しかし、たしかに楽しげな投稿なのは分かるんだけどどうせこの裏には何かがあるんだろうなっていう勝手な思い込みで何の興味も持っていなかった。
そして、それ以前にウチの弟がかつて岩手の介護施設に勤めていた事があり「もう二度と介護の仕事なんかやらねえ」と言っていたのが心に刻まれていたため、介護職にはあまり良いイメージを持っていなかった。
とりあえず、スマホでその哲也さんの会社名を検索しホームページを見てみるとトップ画には
車椅子の方々と、ヘルパーと思われる方々がニコニコ楽しそうにしている画像が使われていた。
う、胡散臭い!!
まあ職業柄、表向きニコニコせざるを得ないのだろうけど、それにしても「介護職=悪魔がいそう」というイメージどおりの胡散臭さ
そして、このニコニコしているメンバーの中の誰かが悪魔なんだろうな。
でも世の中の企業のほとんどが大なり小なりブラックなんだから、ここはひとつ、悪魔地獄をずっと支えてくれたカチさんの好意に懸けて「せめて小物の悪魔であってくれ!」とサイコロを振る決心が湧いた。
そして面接の日取りを決める前に哲也さんにメールで入念に探りを入れた。もし、ここでダメだと思ったら白紙に戻してもらおう。
「その仕事でイヤな事を教えてください」
「雨の日くらいかな」
「…他には無いんですか?例えば人災的な」
「無い」
「…マジで他には無いんですか?」
これと似たようなラリーを何回繰り返しただろうか、いい加減「しつこいな」と思われただろう(笑)
哲也さんはそう言ってるけど果たして本当だろうか。いざとなったら資格だけ取って、辞めてしまえ
そう開き直って向かった面接
下北沢の事務所で待ち構えていたのは
モヒカンでパンキッシュなファッションに身を包んだ関西弁のお兄さんだった。
年齢は俺より少し上なのだが、取締役という肩書きを全く感じさせないフレンドリーさで
それが余計、俺の警戒心を強めた。
あー、いるいる。いるよねぇこういう人
めっちゃ若々しくフレンドリーな雰囲気を醸し出しておいて、裏ではネチネチ攻撃してくるタイプなのかも
もしかしたら、この人が悪魔かな?
とりあえず雇用契約は交わしたのだが
しばらくは心を閉ざす事にした。
そして入って間もない頃、この会社の飲み会が行われ新人の俺も呼ばれたのだが
ヘルパー総出で現役もOB/OGもたくさんで、みんなで肩組んでワイワイ楽しげな、その宴において
俺は誰とも口を聞かなかった。
この異常な仲の良さが、ますます怪しい
それにしても、この雰囲気どっかで見た事あるぞ
あ!某ア◯◯◯イだ!(詳細こちらから)
この異常な仲の良さは、在庫地獄の苦しみをまだ知らないネットワークビジネス初心者達を交えた希望と光に満ちた状態なんじゃないか?
きっとそうに違いない
この人達とは、しばらく距離を置いて働こう
あれから8年…
信じ難い話だが
悪魔がいない企業というのは、この世に存在した。
現在のホームページ(Live Ones Own Life Piece)も相変わらず、ヘルパー達が車椅子のみんなとニコニコ楽しそうにしている写真が使われており
まんまと組織に取り込まれてしまった俺も、その中に満面の笑顔で紛れているのだが
やっぱり胡散臭い(笑)
しかし面接前に哲也さんから聞いた事は本当だった。
それまで「言われてる内が花だぞ」をはじめとする、悪魔達が都合よく人身掌握するために開発された言葉に洗脳されていた事を、この会社に入って知った。
付き合い続けなければいけない人、働き続けなければいけない職場、居続けなければいけない場所
そんなものは地球上に存在しない。
長きに渡る悪魔達との死闘の果てに、これらの教訓を獲得した俺が、8年以上も勤務し続けていられる奇跡
興味ある方はDMください。
つづく
次回「悪魔のいない企業というのは人間界に存在したのだ…そして俺は柔術の神に導き出され始めた、という自慢込みの企業PR」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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