岡市 尚士

岡市 尚士

2021.07.15

復興支援活動に殺されそうになっていた時の話「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/164話」

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「あ、コイツ全部飲みやがった!まあ良いんだけどさこのブランデー高かったんだからな!…(笑)」

呆れながらも笑って済ませてくれたカチさんの言葉にハッとさせられたが

人様の部屋に置いてあった高級酒に手を付けてまで、それでも全然、泥酔できないほど

精神的に参っていた2013年初旬というのは

二度と思い出したくない過去ランキングでぶっちぎりの一位ではあるのだが

こんだけ曝け出してきた当ブログにおいて、ここだけスルーするのも何だか気持ち悪いし

あれから8年経ってるし、もう良いだろう、と

言える範囲で書こうと思う。

前回「新米パパとなり、柔術のさらなる精進に拍車をかける俺の姿は育児放棄だったのか否か」でもお伝えしたが2012年11月から新米パパとなった俺は家庭を顧みず柔術に没頭していた、その一方で

「復興支援活動を頑張っている人」という顔も持っていたのだが…いや「復興支援活動を頑張っているように見せている人」と言った方が、しっくりくるか

そんな俺の″自己顕示欲″が全ての元凶だったのだろう

この頃、抱えていた″案件″は、2012年末から2013年頭にかけて雪だるま式に巨大化し、それにまつわる、お金・時間・労力・その他もろもろ全ては、たかだか弁当屋のアルバイト(妻子持ち)が耐えうる許容量を遥かに超えていた。

まさか、こんな事になるなんて

その″案件″こと

2013年3月に故郷・山田町で開催予定の音楽イベントが無事に開催されれば、山田町のみなさんの喜ぶ顔が見れるかもしれない。

しかし、それと引き換えに主催側の一人である俺は、精神的に殺されそうになっている。

開催に向けて、起きてから寝るまでずっと各方面との連絡のラリーが終わらない。一時も携帯が手放せず、弁当屋の配達中、信号待ちの間もメールをチェック

週末は都内で行われる復興支援イベントに出向いて、募金活動に勤しみ開催に向けての費用稼ぎ。スタッフを務める頑固プロレスのリング上でも募金を募った。

SNSでは進捗状況と、最新の″感謝″を随時投稿

その合間合間に打ち合わせを注入。あちらを立てればこちらが立たず、さてどうしたもんか

高田馬場道場の柔術クラス指導に来てる時だけが携帯を見ないで済む唯一のオアシス

そんな死にそうになってる俺を

見るに見かねたカチさんが自宅に呼んでくれてソバを大量に茹でて振る舞ってくれた。

高級ブランデーを飲み干してしまっても笑ってトホホで済ませてくれたカチさんの胸で俺は泣いた。

しかし何故、こんな状況に陥ってしまったのだろう…

思い起こせば震災後、上京してすぐバンド時代の人脈を活かして集めた物資を、逃げるようにして出てきた田の浜のみんなに送るという活動を始めたり

代々木フォレストの有志数名とボランティアスタッフとして山田町入りし、全国から集まったボランティアの皆さんと一緒に泥出し作業とかやったり

そんなに目立った活動ではなかったけど

きっと、あれで充分だったんだ。

復興支援なんか、ひっそりやってりゃ良かったんだよ

ちなみに物資提供してくれたバンド関係者の中で一番協力的だったのは増沢さん(テルスター/ガールハント)だった。

ちょっと浮ついたイメージのある普段の姿からは想像もつかないし、そして増沢さん自身もそれを公に発信してないし今後もしないだろうが、俺が代わりに言う

バンド関係者で圧倒的に群を抜いて一番連絡をくれてそして大量に物資を送ってくれた増沢さんをそれまでお見それしていた自分を恥ずかしく思う。

そんな感じでひっそりやってたのだが

当時、同じトイカツ道場でボクシングコーチを務めていた西垣さんも、独自ルートで被災地に物資を届けに行き、ついでにプロバイオリン奏者でもあるご自身の演奏もお届けして帰ってくるという活動をしており

俺にはそれがめちゃくちゃ輝いて見えた。

「こんな近くに被災者いますよ!一緒に山田町行ってください!」

そう近づいたのは俺の方だった。

そんで現地で演奏するとなりゃバンドマン時代の血が騒ぐというか、持ち前の自己顕示欲が顔を出してきてプロの奏者である西垣さんからしたらホント迷惑な話なのだが定期的に一緒に演奏させてもらうようになり

その活動の道中で「震災から二年が経つ2013年3月に山田町で演奏会をしましょう」と

発生した″案件″に

都内の活動で知り合った復興支援活動家のみなさまが次々と賛同者として次々と名乗り始めてくださって

そりゃあもう各方面から善意が善意を連れて来ては

その度に頭を下げて、はい!ありがとうございます!心から感謝いたします!

…と、やっているうちに″案件″は

自分でも収拾がつかない程、巨大化してしまい

結果、カチさんの高級ブランデーを飲み干しても全く酔えないほど精神的に参ってしまった、と

ただ、思い出したくない過去ランキング一位である事には揺るぎはないのだが、その半面

己の身の程を知る、良い機会でもあったとも思う。

結局、この出来事を機に西垣さんとは袂を分かつことになったのだが今でも山田町で復興支援活動を地道に続けている(らしい)姿には尊敬しかない。

俺はそんな器じゃなかった。まったく、復興支援活動の現場で自己顕示欲なんか出してんじゃないよ。泥酔してラーメン食って射精すればそれだけでOKな人間のくせに格好つけようたって無理なもんは無理なんだ。

でも「これでいいのだ」とバカボンのパパと同い年の41歳を迎えた今はそう思えたりもする。

当ブログも最終回まで残りわずか。シリーズ最後の壁であろうこのエピソードを記せてホッとしている。

そして最後に、この時期、精神的に特に救っていただいた方々を紹介したい。

代々木フォレスト柔術クラブ、高田馬場道場の皆さんはもちろんのこと

ソーケングループ有吉社長は俺からのストーカー並の電話攻撃にも嫌な顔せず相談に応じてくださって

この後も復興支援イベントに呼んでもらったりして、ずっとおんぶに抱っこの状態に俺は甘えっぱなしだ(柔術着姿でギター持ってる俺の動画がWEB上に残っており、その全て有吉社長主催イベント時のもの)

そして当時トイカツ道場所属のプロ選手だった岸さんは嫁の里帰り中、ウチに居候してくれていたのだが、毎晩酒を飲みながら話し相手になってくれた岸さんが居なければ俺はきっとアパートの屋上から飛び降りて足くらいは折っていただろう。

前述のカチヨウチ先輩に関しては、高級ブランデーでもてなしてくれただけではなく、なんと自身の作ったTシャツの売上や吊りパンを山田レスリングクラブに寄付してくれたり、実は超男前なオジサンなのだ。

そのカチさんと一緒に、俺の部屋でカニパーティーを開催してくれたつしまさんは疲弊しきった俺のために長渕剛の「乾杯」を、あのお馴染みの″つしまボイス″で朝まで歌ってくれて意識が朦朧としてきた。

それから二週間くらいは部屋がカニ臭かった。

そして何より一番元気付けられたのは

某YY木FレストJ術Cラブの某先輩が

S的Sービスを提供された前後でBッKしている御勇姿をmixiに友人限定で公開していたのだが、この写真を見るとどんなツラい事も忘れることができた。

思ってみれば、その某先輩は当時41歳位だったのだがひょっとしてその写真には「これでいいのだ」というそんなメッセージが込められていたのかもしれないと自分も同じ年齢になってみて、そう解釈している。

俺は復興支援活動の矢面に立てるような人間ではないかもしれないが、悩める後輩がいたらBッK写真で元気付けられる、そんな41歳になら成れる気がしている。

悩める若者よ、死にそうな時はDMくれ

そして、遥か長い道のりを歩き始めた君に幸せあれ

(byつしましんご)

つづく

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この記事を書いた人

岡市 尚士

岡市 尚士

ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。

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