岡市 尚士
死 「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第158話」
「前記事/シャベルを振り下ろさなければ何も進まない。瓦礫の上を歩いてるだけの毎日が無意味なことぐらい、よく分かっているのだ 」
四月下旬、山田湾で祖母の遺体が上がった。
履いていた上履きに「岡市」とマジックペンで書かれていたためウチの親父に連絡があったのだ。
ただ、腐敗が進んでいるのであろう遺体が本当に祖母本人なのかどうか、これからDNA鑑定に出し確定するまでしばらく時間がかかるらしいのだが
ずっと抱えていたソワソワした「覚悟」のようなものは、ようやく腰をおろしはじめ
親父や叔母達が言う「バアやんが身代わりになって、親族全員を守ってけだぁんだ」という言葉は普段全くスピリチュアルな世界観を信じない俺の心を諫めた。
なんだか、ひとつの闘いが終わった感じがする。
まさか東京から帰ってきた″意義″を、こんな形で強く感じる事になるなんて、余りにも最悪ではあるのだが
もしも東京のコールセンターで祖母の訃報を聞いたとしたら気が狂って、永遠に自分を許すことのできない人生を送ることになったかもしれない。
結果的に、震災当日「シーサイドかろ」を訪ねた俺が子5人・孫13人・曽孫31人の中で、一番最後に祖母に会った親族になったのだが
それは、生まれてから上京するまで20年間。散々迷惑をかけ何万回もクソババア!と言ってきたクソ孫の、せめてもの最後の自分勝手な免罪符になった。
田の浜に帰ってきて本当に良かったと心から思う。
そして同じ頃、また一人、身近な人間の訃報を聞く。
ウチの祖母と同じ「シーサイドかろ」で理学療法士/職員として勤務していた
同級生・ユズル
小学校の頃、俺がレスリングを始めるキッカケの一つを作った友人である。
彼が犠牲者になったことを聞いた時、俺の歴史の一部が削り取られるような感覚に襲われた。
それは単にレスリング仲間だったから、
…それだけではない。
正直に言うと
俺は中学くらいまでユズルのことが嫌いだった。
レスリングを始めて以降、一緒に居る時間の多かった彼は、根は明るい人間なのだが、たまに高圧的になるところがあり、それが鬱陶しくて堪らなかった。
そんな彼を「この世から消えて、いなくなってしまえば良いのに」と思っていた歴史を俺は持っている。
しかし高校に入り、重度のヘルニアによりたった一年で引退を余儀なくされた彼に代わり、それまで脱走してた俺がカムバックして以降は居合わせる機会も減り
やがてバンドマン時代、帰省時に車でバッタリ会うと窓から顔を出して「ミュージックステーションいづが楽しみにしてっけえ」と声をかけてくる彼には、昔のような中二病のオーラはすっかり消えていた。
そんなユズルの勤務する「シーサイドかろ」に
ウチの祖母が入所することになった際に、彼の口から「俺に任せで、絶対良ぐすっから」と聞いた時は
人間って子供から大人への成長段階で180度も印象が変わることってあるんだなと、東京で中二病全開中で己の野心にしがみついてる自分が恥ずかしくなるほどユズルは立派な人間になっていた。
そんな愛憎入り混じる彼の訃報は、受け入れ難いものがあり。そしてウチの祖母と同じ津波の犠牲になってしまったという事なのだが
ウチの祖母と、ユズルでは明らかに違う。
大正生まれ90歳。昭和三陸地震の大津波、第二次世界大戦を経験し、5人の子供、13人の孫、31人の曽孫を残したウチの祖母の死と
まだ30歳のユズルの死は全くの別物だ。
部員の誰よりもレスリングを愛していたのに
誰よりも早く辞めざるを得なかった。
社会人後の彼のライフスタイルはほとんど知らないが超難関の理学療法士試験に合格し、職場の仲間からも大変慕われていたと聞く。
震災当日、俺が訪ねた時は休みで居なかったが
地震発生後、自宅からすぐに駆けつけ入所者さん達の避難誘導に取りかかったらしい。
その後、瓦礫下から彼の父さんによって発見される。
だから俺ら、何があっても死んではならないのだ。
人生がどんなにツラくても、退屈でも
開き直れば良い、クズ野郎になれ
やめろ、逃げろ、中途半端でいい
何も始めんな、引きこもれ、負けろ
否定しろ、嫌いになれ、二度と会うな
それは俺らに与えられた最高の権利だ。
けれども死んだら、それらすらも全部終わるぞ?!
いいよ、好きに生きろ。生きていれば何でもOKだ。
これがユズルと、未だ行方不明のミッツ君
船越小学校の同級生2人はじめ東日本大震災の犠牲者になってしまった人々から教えられたことだ。
つづく
次回「再興に向かってのこの期に及んで、なに柔術がやりたいだなんて吐かしてんだよ俺は〜瓦礫上で渡されたブラジリアン柔術紫帯〜」←読めます。
※追伸/入所者・職員合わせ2割しか助からなかった「シーサイドかろ」だが、生き残ったメンバーさん達で新しく設立された事業所には、そんなユズルの名を冠した名前が付けられている。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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