岡市 尚士
プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで 第46話「ギター白帯」
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もう2年も経ってるだなんて…
トクの部屋で出会ったカズ君との会話の流れで
自分がもうすでにギター歴が2年に達していることをあらためて認識しました。
俺がギターを手にしたのは蝶野正洋のヒールターンとほぼ同時期の1994年夏(こちらを参照)
この2年間で
計画的にヒールターンしたスーパースターは黒のカリスマと呼ばれ。
彼が結成を企てるユニットはのちに日本全土に社会現象を巻き起こす。
そんな夜明け前でした。
片や中二病的に始めた俺のギターレベルは
例えるなら
見知らぬ県の、山に囲まれた県道にいきなり車からポンと降ろされて。人誰一人として歩いてない。地図もない。もちろんスマホもない。どっち?こっち?そっち?
2年前。そんな状態からスタートして歩き出したけど・・
さっぱり
いつまで経っても山に囲まれた風景で
もう全然、街なんか見えてこない!
こんな状態でした・・。
バンドやりたい!レスリングなんかやりたくねえ!って脱走したけどバンドどころかギターすらまともに弾けない。
でも普通こんなもんだろうとも思ってました。
なぜならバリバリ弾ける人間が身近にいなかった。
山田中学校の同級生で一人だけゲロ上手い奴が居ましたがそんな接点なかったし。普段付き合いのあった鹿野はじめ何人か。ぼちぼちギターを始めておりましたけど、みんな大して弾けないし。少し長くやってる俺はその中でもまだマシな方でしたから。
だから。まあ、こんなもんなんだろうなと。
さっきまでのスケベトーク中は芝刈り機に憑かれたようにジタバタしていたカズ君でしたが。
話題がギターに及ぶとそのトーンも落ち着きを取り戻しました。
カズ君自身もギターをやってるそうで。
歴は1年らしいけど。もしプロになるには今よりもっと練習しなければダメだと。
初対面で****の一日最高回数を聞いてくる無礼者以外の何者でもなかった彼はギターの話になると一転、超現実主義者でした。
後日、トクの部屋にまた現れたカズ君。
今度はギター持参でやってきました。
ちょっと弾かせてもらったんですけど俺のギタープレイを見終えた目の前にいるカズ君は。
初日あんなに笑い転げていた赤いカズ君ではなく青いカズ君でした。
「おがいっつぁん、、、、それマズイよ、、、。」
・・え、何このショックすぎる反応。
ギター歴では1年後輩のカズ君の素直な言葉が胸に突き刺さりました。
え、そんなに?普通こんなもんじゃないの?みたいな態度を示すのが精一杯で。
じゃあ、そこまで言うカズ君のお手並みはどんなもんなんだいというと。
ハッキリ言ってお見事の一言でした。
え、一年なのにそんなに弾けるようになんの?
先輩としての安いプライドが顔を出し
ちょっとまた貸してみて!と、また色々弾くんですけどヘタクソな内は何回弾いたって同じで。奇跡のプレイなんか絶対生まれないんですよ。
横で聴いてる、いたたまれない表情のトクがいくら判官贔屓してくれたとしても。その差は明らかに歴然。
こんな惨めなショーはない。
一体この差はなんなんだ!!
答えは簡単。
23年後の私が解説します。
教えを守っている/我流でやろうとする
読んでいる/読んでも我流でやろうとする
見ている/見ても我流でやろうとする
この差です。
カズ君も俺も参考資料としていたものは同じような「紙媒体」教則本やら雑誌やらバンドスコアやら。
参考資料に差はありません。
雑誌「BANDやろうぜ」で言うと。毎月ギター上達のためのあれこれが書かれているんですが。
これらの説明を忠実に守って再現しようとして取り組んできたカズ君と。
説明を見て2〜3回適当に我流でやってみて出来る気になって他にもアレコレ手を出している俺の。
その差。
やる/やらない
ではないんです。
どちらもやってる。
やってるんだけど
教えを忠実に再現しようと取り組んでいるのか。
教えをまだ再現出来ないのに、それっぽく我流でやってみて、すぐ次のことをやろうとするのか。
これを一言で言い表すと
「基本」
ということになるんだと思います。
基本って難しいんです。
忠実に再現出来てこそなんです。
この話そっくりそのまま柔術にも置き換えることが出来ます。
ギター歴1年後輩からの素直なダメ出しに
惨めで、カッコ悪くて、とても恥ずかしい気持ちになりました。
しかしカズ君に悪気なんか無く。バンドやりたいって言ってる割には全然弾けてないギター歴では1年先輩の俺を単純に心配してるだけ。
そして基本を知っている人間は弱点の発見にも長けていて。
カズ君は俺のギタープレイをたった数分見ただけなのにピンポイントで2、3個の改善点を発見しました。
そのたった2、3個が
俺にとっては魔法の言葉になりました。
ギターを手にして丸2年。
遅すぎる第一歩でしたが、ようやく歩き出しました。
つづく
次回「ギターにも柔術にも存在するレベル0→1のトンネル」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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