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「君、高校生だろ?」
全く予想外の展開にフリーズしてしまいました。
山田や宮古でタバコ吸って歩いてても私服ならば捕まることなんてまず無いのに。暗黙の了解っていうものが盛岡では通用しないことに泡食ってしまって。
おまわりさんの質問に対して咄嗟に口から出たのが
「いや、専門学校です。」
何で専門学校って言っちゃうかな。
「無職」という選択肢もあっただろうに
「どこの専門学校?」
ってなりますよね。ほら見たことか。
「・・盛カレ」
これが限界だった。
盛カレとは「専門学校盛岡カレッジオブビジネス」の略。
当時、岩手県ではこんなCMが放送されていました。
「盛カレッ!盛ジョビ〜!」
自分に課してしまった大喜利のお題「専門学校」に対し。まず浮かんだのがこのキャッチーではあるけどローカルらしい安っぽさが印象的なCM。
自分のアホさにうんざり。
大体にして盛カレの学生さんって自分の学校のことを盛カレって略すのかどうかも疑問だし。ちなみにカップリングの「盛ジョビ」とは「盛岡情報ビジネス&デザイン専門学校」の略である。
そして交番に連行された途端、脳内に分泌されはじめたのは。
今夜、合流予定の田中先生(巨漢)の顔。
補導?全然構わない。親に連絡されても平気。
どんな社会的制裁も受けます。
ただ、我々レスリング部員が唯一恐れている事。
それは部の先生達からのレスリング的制裁。
こってり絞られる。
これまで問題を起こした歴代の部員達が先生方に絞られてきた伝説は散々聞かされてきました。
中でも「田中先生のは凄まじい」という都市伝説が・・
普段の田中先生はとても穏やかなんです。同じ巨漢でも水産チームの巣内先生はブチ切れる時も笑う時も表情がとても豊か。感情のメーターが振り切れている。
そんな巣内先生とは正反対で。田中先生の常に微笑んでいるようなその表情が崩れるのを俺は今まで見た事がない。
だから余計に恐ろしい。
レセプションパーティーから外に連れ出され。
深夜の盛岡を気が遠くなるまで走らされ、延々とタックルをさせられ潰されを繰り返し、ぶっ倒れるまでジャンプ&バーピーをさせられる。
そんな悪い予感しかしない。
すると交番の外にウロウロしているミツルを発見した。店から戻ってきけど消えた俺を探しているであろうミツルが窓枠の右から左へ、左から右へ、消えては出て、また消えて
そのソワソワが心情をより不安定にさせます。
おまわりさんにリュックの中の物を全部出させられ「なんだキミ、ランナーか!明日走るのか!」と。
オリンピックの資料には身辺情報がバッチリ記載されております。色々書かれたのち解放。
交番から青ざめた顔で登場した俺にミツルは爆笑していました。
「多分、学校に連絡いくな・・」
世の中に携帯が普及しはじめていた頃だったので今頃、盛岡に向かってきているであろう田中先生が学校から補導の情報を入手していてもおかしくはありません。
そんな地獄の水面上でぐらんぐらん揺さぶられているような精神状態がギャグに思えてしまうほど
夜のレセプションパーティーはめちゃくちゃ豪華でセレブリティで鬼バブリーなものでした。
テレビ局、新聞社など報道陣が多数詰めかけ。あいにくサスケ大先生はいらっしゃらなかったものの聖火ランナーを務める著名人達がドライアイスもくもくのフロアを船みたいな台車に運ばれてステージに登壇。
我々、補助ランナー達も壇上に上げさせられアナウンサー達や著名人達と絡む取材めいたものもありました。
飯も高級ブッフェでしたが
いかんせん全く食欲が湧かない。
そこに立っている微笑の巨漢・田中先生が何も言ってこない。
その微笑みの表情は全く崩れない。もしかしたら知っててほくそ笑んでる可能性もある。そのうち微笑みの表情が鉄仮面みたいに見えてきて処刑を執行される悪いイメージが止まらない。
結局、パーティーの最中は何も言ってこなかった田中先生。
でもまだ油断は出来ません。部屋に戻ったところでいつノックがくるかも分かりませんから。
ドアの向こう側で近づいてくる足音
「いよいよか、、」
覚悟を決める。
・・あれ、違った。
これを繰り返す夜。
なんてこった。
一世一代の大一番が控えているというのにそれどころじゃねえ。
でも結局、田中先生は現れませんでした。
さすがに聖火リレー本番当日の執行は無いだろうから。
学校に帰ったあとだな!絞られるのは。道場で。
まーいいや、もうどうにでもなれ!観念した。
田中先生!どうぞ、お好きにやっちゃってください。
帰ったあとの事は忘れる!
俺は今日を楽しむよ!
なんつったって目の前にサスケ大先生が登場ですから。
移動中のバスの中ではサスケ大先生の隣に付きっ切りでプロレスの話たくさんさせていただきました。
そんな腹をくくった清々しい表情が翌週発売の週刊プロレスの表紙を飾った。
ちゃんと記事にもなっている。
ちなみにこの号ではFMW内で派生した別団体″ZEN″の旗揚げ戦と大元であるFMWに相当なページ数を割いている。そのどちらにも出場しているヒールユニット「チーム・ノー・リスペクト」の登場数たるや。この号に関して言えば扱いは全日本プロレス以上だ。(新日本は興行なし)
他に印象的な記事としては「謙吾のパンクラス入団発表」「1度目の引退を果たした長州力の引退記念パーティー」があった。
そして、この週刊プロレス現物は津波で一度流されたもののウチの瓦礫の下敷きから発見して。奇跡的にキレイな状態のままだったので回収した数少ない“遺留品”のひとつである。
つづく
次回「1998年、それはクラスの半数近くはGLAY/BELOVEDのイントロ前半だけならギターを弾けた、そんな時代」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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