岡市 尚士

岡市 尚士

2019.03.12

プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで 第11話「レスリング」

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｢レスリング｣

長期に及んだ闘争に困り果てた母親が（前記事参照）俺に提案してきたスポーツは想像のはるか斜め上から降りてきました。

そのレスリングとやら、船越小学校の同級生ユズルが習っていると文集に書いていたのを読んで名前だけはなんとなく聞いた事がありましたが、どんなスポーツなのか全く分かりません。ボクシングと名前が似てるからきっと同じように1vs1で戦うスポーツなのかなっていう程度の認識で

そんな未知のスポーツの我が町における歴史は｢山田町レスリング界の父｣こと上野三郎先生が隣町・宮古商業高校への転任にともない、生まれ故郷の山田町へ帰ってきた1986年（昭和61年）｢山田レスリングクラブ｣を設立したことから始まります。

同クラブは、狭い田舎町ならではのクチコミ拡散力に加え、上野夫妻の人望もあり

また上野先生同様、自分の子供達全員にレスリングを習わせている湊先生、松村先生という二人のコーチの影響力も絶大で

小学校の友達が友達を呼び、キッズレスラーは雪だるま式に増え続け、山田レスリングクラブは設立3〜4年で全国大会で入賞者を出すまでになりました。

しかし出る杭は打たれるのが村社会の常であり、それはここ山田町も同様、新興集団である山田レスリングクラブも｢外部から色々言われる｣対象になります。

特にコーチの一人・松村先生は、勤務するガス会社の同僚の女性から、数年間の長きにわたりレスリングに対して懐疑的な態度を示されていたといいます。

その同僚の女性こと俺の母親の口からレスリングという言葉を聞いたのは1991年（平成3年）3月頃

母親はずっと隠し持っていたのです。

そのため俺は同級生ユズルや初期メンバーのみんなに比べて遅めの、小五になる直前というスタートではありましたが格闘技を習える権利をようやく獲得し

これにて、長きに渡る母親との闘争にも

終止符が打たれました。

しかしすぐにとんでもない事件が…

なんと弟もレスリングを始めるというのです！

は？俺がたった一人で何年も闘争してきたのをテメー間近で見てきたよな？

でも、これだけではありませんでした。

まさかの妹まで始めるというのです！

俺がたった一人で何年も苦労して架けた格闘技への橋を開国運動に一切関与してこなかった二人がこれっぽっちの苦労もせず兄に便乗して渡ろうとしてる！

そしてそれをあっさり容認しようとしてる母親！

何年もずっと俺に反対してきたのに？！

ていうか弟と妹そこまでのやる気はないじゃん！なのに簡単に習えるのってなんかおかしくない？

格闘技ナメてんのか？俺の今までの苦労は？

てめーら渡航費、払え！！

いいですか！世のお母さん達！

長男／長女への心のケアは忘れてはいけません。こういうのって意外と尾を引きますから

ところがまたしても信じられない事態が

バーターであるはずの妹が

さらにバーターを連れてきました！

隣に住む同級生カズの｢妹｣！

さらにその兄であるカズ！

さらに便乗して田の浜の同級生二人！

…とその兄！

  1. 俺
  2. 弟
  3. 妹
  4. 隣人カズの妹
  5. 隣人カズ
  6. 田の浜の友達
  7. 田の浜の友達B
  8. 田の浜の友達Bの兄

笑うしかねえ

ここまできたらお手上げです。

友達の兄貴まで橋を渡ろうとしてんだもん。もう怒るに怒れない。

人間は軽いよ。軽過ぎる。

色々と湧き出る反吐をグッと堪え｢まあ練習日以外でも兄弟とかカズ達と練習出来るから良いかな｣とポジティブに誤魔化すでもしなきゃ、やり切れない

なんだかなぁなスタートでしたが

こん感じで、格闘技人生は幕を開けましたとさ

つづく

次回「プロのレスリング」

※ちなみに山田レスリングクラブは34周年を迎えた今も活動中。道場も俺が始めた当時と全く変わってません。震災時、津波の被害もなかった区域です。月謝は当時破格の500円だったのが今はなんと無料！→https://ameblo.jp/ueken0416/

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岡市 尚士

ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会／58キロ級３位、レスリング岩手県高総体／52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体／56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ／48キロ級３位と多彩な実績を持つ。

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