岡市 尚士
2011年3月11日14時46分〜死んだ祖父から生前よく聞かされていた津波の話〜 「プロレス好きのバンドマンが柔術黒帯になるまで/第147話」
2011年3月11日14時46分
ミッツ君のスマホが突然、激しく鳴った!!
地震!!
…またかよ!!
またかよ、というのは二日前も同じように大きな地震があったのだ(前記事参照)
そして柔術の練習は始まったばかりだ。
汗ひとつかいてない。
ここで一旦″柔術の練習″について簡単に説明しよう。
俺は昨年8月に帰郷し古巣・山田レスリングクラブで指導をさせてもらう事になったと同時に
「空いてる時なら自由に道場を使っても良い」という同クラブ監督・上野先生のご厚意で
引きこもりの格闘技オタクになっていた保育園からの同級生ミッツ君に柔術を教えながら練習していた。
ただミッツ君の気分や調子など波のようなものがあるので毎日練習出来るわけではない。
だから彼との練習は貴重なのだ。
格闘技で汗を流すために、車で二時間以上かけて移動しなければならないこの岩手県内において
片道10分程度で格闘技で汗がかけるなんて最高ではないか。
そんな貴重な練習日なのに
準備運動であるエビを始めた途端
地震が来やがった。
慌てて帰り支度を始めたミッツ君に促されて
急いで田の浜に戻ることにした。
なんてこった。
スパーリング一本くらいやりたかった。
本音を言うと田の浜に戻りたくない。
それは練習が中断したこともそうだが、他にもある。
消防団で集まることである。
俺が属している消防団は大きい地震が発生した際には駆けつけて、防波堤の門扉を閉めなければならないという任務を抱えている。
それ自体には何の不満も無いのだが
問題はそのあとである。
津波警報/注意報が解除されると、ほぼ確実に
みんなで「飲みに行ぐぞ」となる。
それが二日前。3月9日の大地震だった。
しかし心の底から行きたくなかったので「どうしても親戚の家に行かなければならない」と嘘をついてパラエストラ久慈さん(現アカデミア ラッソーナ)に練習に行った。
あれからまだ二日しか経っていないのに
これは困った。
今日はなんていって飲みを断ろうか。
そんな俺とは対照的に
助手席のミッツ君は慌てていた。
普段は超寡黙で、落ち着いている彼が慌てる姿なんか初めて見たかもしれない。
当たり前だがミッツ君も俺と同様、子供の頃から何度も地震からの津波警報/注意報を経験してきた。
それはここらへんの人間なら全員そうだ。
日常茶飯事の光景である。
そして古くから伝わる
神話「大津波」
この話も、ここらへんの人間なら誰でも知ってる。
はるか大昔、岩手県沿岸に地震による津波が押し寄せここ田の浜でも多くの人々や家屋が流されたそうだ。
この神話を子供の頃から祖父母だけでなく親戚/学校/地域行事、他方面から聞かされて俺らは育った。
とは言っても、それは第二次世界大戦よりもっと前の1933年(昭和8年)はるか大昔の話
防波堤なんてまだなく海辺は砂浜だった時代である。
今はこんなに頑強な防波堤があるから大丈夫
しかし生前の祖父は津波警報のたびに、家族の誰よりも早く一人でさっさと避難して行った。
そんな祖父を見て
「爺やんは大袈裟なんだぁ」
そう言って真夜中に津波警報が発令されようとも飲みに行ったっきり帰って来ない
もしくは家に居たとしてもまた寝床に戻っていく父・修一の主張にも、なるほど頷けるものがあった。
そう。現代には防波堤がある。
逃げる祖父と、寝床に戻っていく父
幼少期よりこの相対するイデオロギー論争に挟まれ
警報のたび高台にある親戚宅まで、祖母に手を引かれ避難しながらも
俺は、父の主張する防波堤安心論を推していた。
というか毎度、警報が発令されたところで津波なんか結局来ない。
ゆえにプロレスやジャッキーチェンにしか興味がない子供からしてみれば
大津波も、戦争の話も、江戸時代も同じ
はるか大昔にあったと云われる神話にしか過ぎないのである。
そんな俺と同じ田の浜で育っていながら
助手席で慌てるミッツ君が生まれた花坂家には花坂家なりの津波警報時の光景があったのかもしれない。
運転席と助手席で相当な温度差ではあったが
車を急いで走らせ
地震発生から10分後には田の浜に戻ってきた。
とりあえずミッツ君を家の前で降ろし別れ
俺も一旦、自分の家に消防の法被だけ取りに行った。
さっきの揺れの影響だろう。ベースがうつ伏せに倒れていたが、まああとで良いや
急いで家の裏手にある防波堤に行くと
すでに消防団の先輩何名かで、防波堤の門扉を閉める作業が行われており
残りあと少しの段階だったので作業に加わった。
とりあえず全ての門扉を閉め終え
我々は海の近くまで行った。
門扉には小さなドアがついており、そこから出入して海側に行けるのだ。
みんなで一服しながら海の様子を眺めた。
まあこのくらい荒れていることはよくある。
しかしタバコ一本が短くなっていくのに反比例して、波の高さは徐々に増してきて
…ついに岸壁の高さを超えた。
ほお今回は中々だぞ。
それどころか、ますます浸水のエリアは広がってきて
ともすれば、いよいよ突っ立っている我々の足元まで迫らんばかりの勢い…、、
とりあえずさっき入ってきた小さいドアから引き返し
今度は防波堤に登って
上から波の成長具合を見守った。
しかし、その成長はとても著しく
ついには漁業組合に積み重ねられていた漁業用タンクが波に乗って動き出した…!!
大きさ的に一個、銭湯の浴槽ぐらいはあろうそれらが波にさらわれて
俺らが見下ろしてる防波堤に
ガゴンガゴン激しい音をたてて、ぶつかり始めた!!
さすがにここまでの波は、未だかつて見た事がない。
今回はかなり凄い。
次の瞬間だった。
「おい!!門扉、閉め忘れでねえのが!!」
先輩が叫んだ。
防波堤のこちら側を見下ろすと
さっき閉めたはずの門扉の両サイドから
海水が激しく漏れ出している!!
門扉前は巨大な水溜り!!
急いで防波堤から降りてチェックした。
しかしチェックしようにも、すでに腰まで浸かりそうなほど深いこの水溜りに入っていかなければちゃんと閉まっているかなんて確認は不可能
二、三歩さがると防波堤の全域が視界に入り
左右遠方を眺めると
すべての門扉前にも、同じく巨大な水溜りが!!
…これは閉め忘れじゃねえ!!
波の力でこうなってますよ!!と先輩達に聴こえるように大声で叫んだ。
このままだと、すぐそこにある俺の家は
床上浸水くらいは確実である。
せめて車だけでも逃しておこうと咄嗟に判断し
団長のユウさんに「車、上に逃して良いですか!!」と叫んだ。
行け!!のジェスチャーでユウさんはどっかに走っていった。
ほか、目につく人達みんな異常な慌てっぷりで
みんな高台を目指して走ってる。
波より、その異常な田の浜の人々の慌てっぷりに恐怖を感じてゾッとした。
俺も家まで走り、車にエンジンをかけ
田の浜の高台に位置する同級生ヒデの家を目指した。
坂道をアクセルベタ踏みで走らせれば20秒程度で着く
坂道の途中、ウチから数件隣のタクシー屋の兄さんとすれ違った。
とりあえずヒデの家の前に車を停め
田の浜全体が見渡せる場所まで行った刹那
・・・!!!!
巨大な「黒い煙」のようなものに
防波堤が、全体まるごと飲み込まれた!!
つづく
次回「第二波襲来、所謂″3.11″のはじまり」←読めます。
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この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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