「ブラジリアン柔術です。」
「K-1みたいなやつですか?」
このやり取り。柔術愛好家のほとんどの方々がそうであるように俺も老若男女問わず多種多様な方々と何十回と交わしております。
まあ他にも柔道、PRIDE、レスリングと対象フレーズはありますけど「K-1」というフレーズにはそれらとは全く比べ物にならない破壊力のようなものがあります。
「ブラジリアン柔術です。」
●柔道みたいなやつですか?
「はい!元々は同じだったのでかなり近いです。」
●PRIDEみたいなやつですか?
「はい!ざっくり言うとPRIDEルールから殴る蹴る叩きつけるを排除した感じです。」
●レスリングみたいなやつですか?
結構違うけど「はい!組み技という点では同じですね。」
●逆に最も優秀な質問としては
「柔道とどう違うんですか?」これは非常に答えやすい!
●しかしK-1については
「はい!そんな感じです。」と肯定が出来ないですよね。なんせブラジリアン柔術とK-1ってルールが反則技同士ですからね。
そして何故か
K-1はよく聞かれるのに「ボクシングみたいなやつですか?」とも「キックボクシングみたいなやつですか?」って聞かれた事は一度もないのが不思議。同じ打撃競技なのに。
これはおそらく2000年代前半〜中盤の格闘技ブームの功績であり功罪でしょう。
当時、格闘技に関心があって観てた方ならK-1とPRIDEの違いくらい絶対解りますし。そんな方々の大半はブラジリアン柔術について「グレイシー柔術?ノゲイラ?」と大正解を言い当てたりします。
しかし「K-1」のフレーズが飛び出してくる方というのは。当時ブームの中心だったK-1とPRIDEの区別がゴッチャになっていて、ブームから10年ほど経過した現在記憶の片隅に「K-1」のフレーズだけが辛うじて残ってる事の表れで。きっと格闘技に1ミリも関心のない方なんでしょう。
きっとブラジリアン柔術出身のノゲイラと闘ったボブサップがぼんやり浮かんでる程度なんだと思います(笑)サップはK-1にも出てましたし。逆にこういった方に「K-1って何かね?」と菅原文太よろしく質問すると山積みカボチャの横でうつむく田中邦衛ばりに何も答えられません。
でもですよ。
俺はこれについて熟考した時期がありまして。それ以降「K-1」のフレーズを発する人に対してだけは優しくするようにしてます。真逆を指摘したりツッコミもしない。
だって俺の口から出た「ブラジリアン柔術です。」その人に対しては本当にどうでも良いことですから。興味ゼロなんですから。
それなのにブラジリアン柔術というフレーズに対しわざわざリアクションしてくれてる。
それって、その人はきっと優しい人!
「ふーん」なんて冷たい反応なんかせず、記憶の片隅に辛うじて残ってた「K-1」というフレーズで精一杯のリアクションをしてくれた。
K-1と聞いてくる=格闘技に全く関心ない=コミニケーションをしようとしてくれてる優しい人
いつしか俺はそんな仮説を立てて日々、K-1と聞いてくる人々を探し求め(笑)寛大な気持ちで接するようにしてます。
日本ブラジリアン柔術の父・中井祐樹先生が1997年に設立したパラエストラ東京。そのロゴには「Martial Arts Communication(マーシャルアーツコミニケーション)」の文言も一緒にデザインされてありますが。このブラジリアン柔術とK-1の一連のやり取りもマーシャルアーツコミニケーションのひとつなのではないかなと思う今日この頃。
人に優しく。
この記事を書いた人
岡市 尚士
ブラジリアン柔術黒帯。第17回茶帯全日本ブラジリアン選手権大会優勝。茶帯全日本マスターズ選手権優勝、茶帯全日本ライトフェザー級2位、JBJJF全日本マスターズ選手権マスター1紫帯ライトフェザー級優勝、全日本コンバットレスリング選手権大会/58キロ級3位、レスリング岩手県高総体/52キロ級準優勝、レスリング岩手県民体/56キロ級準優勝、レスリングジュニアオリンピックカップ/48キロ級3位と多彩な実績を持つ。
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